新世代ディーゼルは日本でも受け入れられるのか? その2


 前回、ヨーロッパでは環境性能に優れたエンジンとしてディーゼルエンジンに注目し、技術開発が進められてきたという辺りまで、ご紹介したかと思います。ではその新世代ディーゼルとはどのようなものなのでしょうか。それを解説する前にまずはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの仕組みの違いについて、簡単にご説明します。
 ガソリンエンジンの燃焼行程では、吸入された空気は吸気管内でインジェクターから噴射された燃料と混ざり合い、混合気となって燃焼室に吸入されます。そして燃焼室内で圧縮され、圧力が高まったところで点火プラグによって着火、一気に燃え広がる圧力によってピストンを押し下げる力を発生します。一方ディーゼルエンジンはというと、吸入された空気はそのまま燃焼室内に送り込まれます。そして燃焼室内で圧縮され、高温・高圧になったところで燃料が吹き付けられ、点火プラグによるスパークというきっかけなしに、自然に着火させるという仕組みになっています。
 ではなぜガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンの方が燃焼効率に優れているのかといいますと、第一にガソリンエンジンでは混合気を圧縮しているため、燃焼室の圧縮比を高く設定できないという点が挙げられます。混合気は一定以上の高温・高圧になると自然に発火するという特性があります。この現象はノッキングと呼ばれ、エンジン内部に深刻なダメージを与えることになりますので、ガソリンエンジンでは絶対に避けなければなりません。一方、ディーゼルの方は空気だけを圧縮しているのですから、いくら高温・高圧になろうと自然に発火することはありません。そのためガソリンエンジンに比べて、圧縮比を高く設定することができます。圧縮比が高ければ、よりパンチ力を引き出せますから、低い回転数から力強い加速力が得られるというわけです。

 第二の長所が燃料の性質による燃焼特性の違いです。ガソリンエンジンでは、いわゆる理論空燃比(14.7:1)付近でガソリン量と吸気の量を設定する必要がありますが、ディーゼルではより薄い空燃比(空気量に対して燃料がより少ない状態)で、燃焼させることが可能です。そのため、同じ距離を走行するにも少ない燃料で済み、その上、発生するCO2の量も少なくて済むというわけです。
 こう聞くといいことづくめのようなディーゼルですが、ご存知のように欠点もいろいろとありました。ガソリンエンジンのように点火装置を持たず、燃料を噴射する量とそのタイミングだけでエンジンをコントロールしているのですから、アクセル操作に対する反応が悪かったり、空気とうまく混ざらずに燃え残った燃料は黒い煤として排出される、また燃焼の荒れによるエンジン騒音が発生するなど、いわゆるディーゼルが嫌われている原因というのもその構造によるものだったわけです。
 ここからがいよいよ本題なのですが、新生代ディーゼルでは燃焼・排出ガス・吸気をより精密にマネージメントすることで、こうした欠点を改善することができるようになったのです。それらを詳しく説明するとまた難しい話になってしまいますので、中でも一番のポイントとなる燃焼システムについてだけ簡単にご紹介しておきましょう。これまでのシステムでは燃料をインジェクターへ送り込む燃料ポンプだけで燃料ライン内の加圧から燃料の噴射量およびタイミングまでを制御していました。しかしこれでは緻密に燃焼をコントロールすることは難しかったのです。そこで“コモンレールシステム”と呼ばれる最新の燃料制御システムでは、燃料ポンプでは加圧のみを、燃料噴射量・タイミングはインジェクターで行うことでより緻密な制御が可能となったのです。具体的には一回の燃焼サイクルにおいて最大5回もの燃料噴射を行うことで、理想的な燃焼制御が可能になり、ドライバビリティの向上、排出ガスのクリーン化、さらには燃焼音の低減までも実現したのです。
 詳しくはコモンレールシステムを開発したボッシュ社のホームページ(http://www.bosch.co.jp/jp/diesel/)を参照していただければと思いますが、こうしてクリーンで燃費がいいだけでなく、走りの面でもガソリン車にはない新たな魅力を持ったディーゼルエンジン車という新たな選択肢が加わったというわけなのです。

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