ダイムラークライスラー社がクライスラー部門を売却


1998年、世紀の大合併と呼ばれ各方面に様々な波紋を投げかけたダイムラーベンツ社とクライスラー社の合併は、この5月にクライスラー部門の売却という形で、事実上、終焉を迎えることになりました。

この十数年というもの、自動車業界では合併・吸収などの業界再編の動きが急速に進み、気が付けば世界の自動車メーカーの勢力図は大きく塗り替えられることとなりました。世界の自動車メーカー各グループの系譜を簡単に並べてみると……

■ トヨタ・グループ:トヨタ自動車、ダイハツ、日野自動車、富士重工業
■ GMグループ:ゼネラルモータース(米国内ブランド:キャデラック、シボレー、ビュイック、ポンティアック、サターン、ハマー、GMC)、オペル、サーブ、ヴォクスホール、大宇、ホールデン、スズキ
■ フォードグループ:フォード(米国内ブランド:マーキュリー、リンカーン)、マツダ、プレミアム・オートモーティブ・グループ(ジャガー、ボルボ、ランドローバー、デイムラー)
■ フォルクスワーゲングループ:フォルクスワーゲン、アウディ、ランボルギーニ、シュコダ、ベントレー、ブガッティ、セアト
■ ルノーグループ:ルノー、日産自動車
■ PSAグループ:プジョー、シトロエン
■ フィアットグループ:フィアット、ランチャ、フェラーリ、マセラティ
■ 元ダイムラークライスラーグループ:メルセデスベンツ、スマート、マイバッハ、クライスラー、ジープ、ダッジ
■ BMWグループ:BMW、ロールスロイス、MINI
■ 現代・起亜自動車グループ:ヒュンダイ、起亜自動車

と大きなものだけでも、ざっと見積もって10グループは挙げられます。もちろん、上記以外にもホンダや三菱自動車など、独立系のメーカーも存在しますが、ご覧いただければお分かりのように、世界の主要なブランドはいずれもどこかのグループに属しています。これはグループ化によって生産効率を高め、少しでも生産・開発コストを下げることで、商品力を向上させることが、その主な狙いです。

ダイムラーはクライスラーとの合併後に、三菱自動車との提携という話もありましたが、こちらもあまりいい結果には結びつかなかったのはご存知の通りです。
そしてクライスラーとの合併でも、生産拠点の共有化など表面的には見えない部分での成果は上がっていたのでしょうが、大元のクルマの方となると、メルセデスベンツの先代Eクラスのシャシーを活用したクライスラー300Cや同じくSLKをベースとしたクロスファイアなど、いくつかの例は見られたものの、他のグループのように共同でシャシーの開発を行うといった前向きな成果はあまり現われなかったようです。

そんなわけで賛否両論、というよりも疑問の声の方が大きかった独米2大メーカーの大合併劇はたった9年という短い期間で、苦い後味を残して解消されたのです。もちろん、これからも両者の業務提携は継続するようですが、軟着陸を目指して緩やかにフェイドアウトしてゆくのではないでしょうか。今後、クライスラー部門は売却先のサーベラスによって、クライスラー・ホールディングスとして新会社を発足、ダイムラー部門はダイムラー社と社名を変更して新たなスタートを切る見込みです。

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