さて、ここまででディーゼル車導入の背景と新世代ディーゼルの技術的な進歩についてはご理解いただけたかと思いますが、果たしてメルセデスベンツEクラスという高級車にディーゼルエンジンという選択はここ日本でも受け入れられるのでしょうか。
これについて国内のメディアでも様々な意見が飛び交っています。メルセデスベンツという高級ブランドがあえてディーゼルで勝負してくるからには、本当に機械として優れたものなのだろう、というブランド力による信頼感が後押しして日本でも受け入れられるのでは? という考え。ヨーロッパと同様に最新のディーゼル車に乗ることが知的で、クールであるというイメージを確立し、トヨタのプリウスがそうであったようにちょっとした社会現象を巻き起こすのではという見かたなど、好意的な意見が多く聞かれます。もちろん、メルセデスベンツ・ジャパンとしてもそうした線を狙っているはずです。
ただ個人的には、流行やスタイル優先でこうした車を選ぶのはいかがなものか、と思ってしまいます。いかにエコだ、省燃費だと言ったところで、ガソリンや軽油を燃やさなければ、ハイブリッドカーもディーゼル車も走らないわけですから、車に乗る以上、それがどんなエンジンであれ排気ガスを撒き散らすことに変わりはありません。本当に環境のことを考えるのなら車に乗らないことが一番だということは誰もがわかっているはずです。にもかかわらず、ハイブリッドだから環境にやさしいとか、新世代ディーゼルだからエコロジーだ、という考え方は欺瞞以外の何ものでもありません。
そんなことよりも、単純にこれらの最新テクノロジーを自ら感じてみたい、という人にこそこうしたエコカーに乗っていただきたいと思います。少ない燃料でいかに長い距離を走れるか、いかにパワーを発揮できるか、というのは、自動車という機械に求められる最も基本的な性能のひとつです。ハイブリッドエンジンや最新のディーゼルエンジンというのはまさにそうした性能における最先端の技術といえます。豊かな低速トルクによる力強い加速感、モーターアシストによるスムーズな走りなど、自動車技術の進歩を体感しつつ、燃料を給油するときにはどれだけの距離を走れたのか、という密かな楽しみも味わえる、というのがこうしたエコカーに乗る真の悦びといえるのではないでしょうか。
そうした意味でメルセデスの新世代ディーゼルがどんな走りを披露してくれるのか、本当に楽しみです。たった3.2リッターの排気量から引き出される47kg-mという5リッターエンジン並みのトルクとはどんな加速をするのか、エンジン音は本当に静かなのか、排気ガスはどれだけクリーンなのか、そして燃費は……、など興味は尽きません。そして果たしてそれが日本でも受け入れられるのか?
ヨーロッパではメルセデスに限らず、多くのメーカーがディーゼルエンジンの開発に力を入れています。そしてその経済性や環境性能の高さから、多くのユーザーに支持され、実に新車の販売台数の50%に迫る勢いでディーゼルエンジン車が売れています。メルセデス製ディーゼル車の日本進出にはその他の輸入車メーカー、そして国内のメーカーも大いに注目しているはずです。E320 CDIが日本でも受け入れられれば、必ず他のメーカーもそれに追従してくることでしょう。そうなれば新世代ディーゼルはもっと身近な存在となるはずですから、メルセデスにはぜひ健闘してほしいものです。
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