最強のV8エンジン、AMG6.3リッター その2


AMG初の自社開発エンジン、AMG6.3V8について、今回はその設計コンセプトや技術的な特徴など、より具体的なポイントについて紹介したいと思います。
V8エンジンといえば、まずそのバンク角がポイントとなりますが、AMG6.3ではセオリー通り90度を採用しています。

V8エンジンでは、振動の低減や回転バランスを第一に考えれば自ずと90度を選択することになりますから、ここは高性能を目指すエンジンとしては当然の選択でしょう。

クランクの形状については特にアナウンスがないため正確なところは不明ですが、上質な回転フィールが求められるメルセデスのエンジンですから、振動の少ないダブルプレーンタイプが採用されているはずです。

ブロックは軽量性と高剛性を両立するためアルミ製のクローズドデッキ構造を、クランクベアリングキャップにもブリッジ構造を採用することで、腰下はハイパワーに耐える強靭な剛性を確保しています。

さらにシリンダー内壁にはフリクションの低減と耐磨耗性に優れる独自のTWASコーティングを施すことで、徹底した振動の抑制とスムーズなエンジン回転を追及した設計となっています。

またこのエンジンでは全域での力強いトルク特性とフレキシビリティを追求すべく、吸排気系のレイアウトに様々な工夫が凝らされているのも特徴です。

吸気系では世界初となる二つのスロットルフラップによって吸気管長をコントロールするデュアルレングス可変インテークマニフォールドを採用。

これはエンジンの回転数に合わせて最も効率的に吸気慣性の効果が得られる吸気管長へと連続的に可変するシステムです。

またインマニからインテークポートへと繋がる吸気経路はレーシングカーさながらに垂直にレイアウトされることで、スムーズな吸気の流れを実現しています。

合わせて吸排気を制御するカムの作動は、IN/EXともに可変バルブタイミングシステムを採用することで、全域での理想的なパワー特性を引き出すことが可能となりました。

ヘッドまわりに関連したポイントとしては、バケットタイプのタペットを採用したことも、より正確なバルブ開閉動作を可能にする設計として特筆すべきポイントでしょう。

こうした多岐にわたる努力の結果実現したのが、514ps/64.2kg-mというNAエンジンとしては驚異的なパフォーマンスなのです。

参考までにこの出力特性を検証してみると、パワーでは1リッターあたり約83ps、トルクでは1リッターあたり約10.4kg-mもの出力を発揮しています。

この数値は例えば同じNA・V8で比べてみると、W124 500Eに搭載されたM119エンジン(330ps/50.0kg-m)で66ps/L・10kg-m/L、BMWの先代M5に搭載されたS62エンジン(5リッター、400ps/51kg-m)で80ps/L・10.2kg-m/L、さすがにフェラーリF430のF136Eエンジン(4.3リッター、490ps/47.4kg-m)では114ps/L・11.0kg-m/Lですが、乗用車用エンジンとしてはいかに効率的にパワーを引き出しているかがお分かりいただけるかと思います(もっともF430では最高出力を8500rpmで発揮していますから、その特性はAMGと全く異なりますが……)。

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