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THREE POINT【ベンツトピックス】

2009年01月04日

新型7シリーズにBMWの未来が見える

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ドイツ流ビッグサルーンのカテゴリーにおいて、メルセデスのSクラスと双璧をなすBMWのフラッグシップ、7シリーズが5代目モデルへと生まれ変わります。現行の7シリーズといえば、従来のトラディショナルなスタイリングを完璧なまでに打ち壊し、BMWのチーフデザイナー、クリス・バングルがその個性を存分に発揮させた独創的なスタイリングがいまだに強烈に記憶に刻み込まれています。
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あまりにも個性的なデザインゆえ、日本では好き嫌いのハッキリと別れることとなったそのスタイリングですが、2段階に切り立ったハイデッキスタイルのリアまわりなどは、その後他メーカーのモデルにも大きく影響を与えたことはご存じの通りです。また、BMWのフラッグシップらしく、(これも後に他メーカーがしっかりと模倣した)iDriveシステムやスイッチ式のコラムシフトなど、先進の技術が惜しげもなく投入されたことでも注目を集めました。

そんな近年のBMWの躍進と先進性を推し進める牽引役ともなった7シリーズですが、今回のフルモデルチェンジでも、なかなか見どころが満載です。まず、そのスタイリングについては、現行モデルのデビュー時ほどの強烈なインパクトはありませんが、彫りが深く立体感を増したフロントマスクに現行モデル(後期型)の流れをくむリアビューを組み合わせることで、ショーファーカーではなく、BMWらしくあくまでもドライバーズカーであることをアピールするようにスポーティなテイストを前面に押し出してきました。
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シャシーに関しては、サスペンション形式こそ現行モデルと同じタイプを踏襲するものの、ボディ構造ではメインフレームに複合熱成型鋼板を採用、ルーフやドア、ボンネット、サイドパネル、さらにはサブフレームを始めとしたサスペンションパーツにふんだんにアルミ素材を採用することで、55kg以上という大幅な軽量化を実現しました。また、すでに5シリーズなどでは定着した観のあるアクティブステアリングをさらに進化させ、リアタイヤにも転舵機能を持たせることで思い通りのハンドリング特性を実現するインテグラル・アクティブステアリングも新たに採用されています。

パワートレーンには、X6でデビューを果たしたばかりのV8直噴ツインターボエンジンを筆頭に、BMW製直6エンジンの集大成ともいえる直6直噴ツインターボエンジン、および同じく直6ディーゼルエンジンと3種類のターボエンジンがラインナップされます。噂では現行M3に搭載されるV8エンジンもラインナップされるのでは、といった話も聞かれますが、そのあたりは今のところ定かではありません。
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ミッションは、現行モデルの電子式のコラムシフトが廃止され、オーソドックスなフロア式に改められましたが、それは現行5シリーズから採用されるジョイスティックタイプの電子式シフトを備える最新の6ATです。また現行モデルでも高い評価を得たアクティブ・スタビライザーと電制ダンパーを組み合わせたボディコントロール技術は、ダンパー、ギアシフト、エンジンスロットル特性、ステアリングアシストまでも含めたトータル制御システム、ダイナミック・ドライビング・コントロールへと進化し、スイッチひとつで状況に合わせてクルマ全体を最適なセッティングに躾けることが可能になりました。

こうしてみると、新型の7シリーズはスタイリングを含めて目新しさという意味ではやや控え目ではありますが、軽量化や高効率エンジンによる徹底した効率の追求や電子制御によるシャシーコントロール技術の研鑚など、今後のBMWが進む方向性をはっきりと指し示しているように思えます。ですが、そうした技術的な面にしろ、デザイン的な面にしろ、ここ10年ほどのBMWの好調をさらに継続させるほどの先進性や勢いはもはや感じられない、というのが正直な感想です。
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2008年12月30日

米国発の電気自動車、シボレーVOLT、いよいよ始動!

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国内では、ミツビシが軽自動車i(アイ)をベースとした電気自動車「i.MiEV」の開発を急ピッチで進めていますが、海外でもハイブリッドで日本に後れをとった数多のメーカーが、ハイブリッドの先を行く電気自動車の開発に心血を注いでいます。そんな中、以前から最も日本のハイブリッド、特にプリウス、を目の敵にしてきた米国メーカーがかねてから開発を進めてきた電気自動車の市販モデルをいよいよ発表してきました。それがGMのシボレー・ブランドからリリースされる「VOLT」です。
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従来のハイブリッドが、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて動力としていたのに対し、電気自動車とは電気モーターのみを動力源とするクルマです。i.MiEVは、一切エンジンを搭載せず、家庭用電源から電気を充電することで走行する完全な電気自動車で、大容量バッテリーを搭載した最新の試作モデルでも航続距離は約160kmと十分に実用的ではありますが、本格的にガソリン自動車の代わりに使うにはまだまだ距離が短すぎます。

対するVOLTも動力は電気モーターのみと、完全な電気自動車であることは同じですが、バッテリーの容量が空になると搭載された小型エンジンを始動し、電気を発電しながら走行することで、通常のガソリンエンジンに引けを取らない航続距離を可能にしています。逆に完全なEVモードで走行できるのは、満充電で約64kmとi.MiEVに比べると短いですが、実際にクルマとして使うとなると、現状ではVOLTの方がはるかに現実的な性能といえそうです。
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例えば、普段、片道30km程度の通勤などに使用する場合は、毎晩充電しておけば、一切ガソリンを消費せずに電気代のみで走行可能で、週末などに遠出する際には、バッテリーを使い切ったところからエンジンを始動し、発電しながらの走行が可能になるというわけです。その場合の燃費については、搭載されるエンジンの排気量や性能などによっても変わってきますが、駆動用に使うのと違って、常に一定回転で効率のいい条件で使えばいいのですから、一般的なガソリンエンジンと比べると、かなりの好燃費が期待できるはずです(現状では搭載されるエンジンの詳細は定かではありません)。
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性能面については、現在発表されているところで最高出力が150ps、最大トルク370Nm、最高速は160km/hとのことですから、ガソリンエンジン車と比べてもそれほど遜色はありません。最高速はやや控え目ですが、ガソリンエンジンの排気量4リッターに匹敵するほどの強大なトルクを、スタート直後から発揮できるEVの強みを生かせば、かなり力強い加速が得られるはずです。スタイリングについても、5ドアハッチバックのスポーティなデザインを採用し、4シーターとしたことで十分な実用性も備えています。昨年のデトロイトショーで発表されたときほどのインパクトはありませんが、十分に近未来的で次世代のEVに相応しいデザインといえるのではないでしょうか。

いよいよ実用化が見えてきた新世代の電気自動車、ミツビシ、GMともに2010年の市販化を目指しているだけに、その実現はもう間もなくということになりそうです。
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2008年12月01日

コンセプトモデルに見る次期Eクラスの面影

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10月上旬に開催されるパリモーターショーにおいて、メルセデスベンツが新たなスタディモデル『Concept FASCINATION』を発表します。このコンセプトカーは、2ドアのクーペスタイルながらも、ワゴンのようにルーフをテールエンドまで延長した、いわゆるシューティングブレークのスタイルを採用したとても斬新なスタイリングが特徴的です。

詳細なボディサイズなどについては、現状ではまだ不明ですが、写真で見る限りリアシートもしっかりと大人が乗車できるだけのスペースが確保されていることが分かりますから、コンパクトなスポーツクーペというよりは、ミドルセダンに近いサイズが予想されます。では突然現れたこのコンセプトカーは、一体何を目的に作られたものなのでしょうか。
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コンセプト・ファッシネーションはボディ形状こそ特殊ですが、メカニズム的にはそれほど新しい提案が含まれているということはないようです。強いて挙げれば、最新のディーゼルテクノロジー、BLUETECを応用した新世代の4気筒ディーゼルエンジンが搭載されている点ですが、それがこのコンセプトカーの目玉というわけではありません。

実はそうしたメカニズム的なアピールというよりも、メルセデスでは、このコンセプトカーを新しいデザイン的な試みを表現するためのスタディモデルと位置付けているようです。では、このサイズのモデルで今後、モデルチェンジないし新型モデルの登場が予定されているのは、と考えてみると、最も可能性が高いのが次期Eクラスです。

次期Eクラスについては、すでに欧州のスクープ誌などでその予想デザインが発表されていますが、このコンセプト・ファッシネーションのフロントマスクからはまさにそうした予想CGに通じるデザイン要素が見て取れます。スクープ誌の予想CGは、どこからそのアイデアを引っ張ってきたのか? と首をかしげたくなるものも多いのですが、メルセデスのニューフェイスについてはかなり正確な情報を掴んでいたようです。
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もちろん、シューティングブレークのボディ形状がEクラスのバリエーションとして採用されることはないでしょうが、従来の丸型4灯式のヘッドライトの面影を残しつつも、シャープな印象に生まれ変わったスクエアなライト形状やトヨタ車でもお馴染みのバンパー一体型のマフラー出口、また一見するとサッシレスにも見えるサイドウィンドの処理など、コンセプトファッシネーションに見られる様々なデザイン的な特徴は、次世代のメルセデスを代表するデザインアプローチとなるはずです。

ただ、いかにミディアムサルーンの王様、Eクラスといえども、現在ではその地位は必ずしも安泰とはいえません。そのためW210のときのように突然、大胆なデザイン変更を施して賛否両論を巻き起こすよりは、まずこのデザインスタディで市場の反応を見てから実行に移したい、というのが今回のメルセデスの考えなのかもしれません。いずれにしても、このコンセプト・ファッシネーションに見られるくらい大胆な刷新が、Eクラスにも求められていることは間違いないでしょう。
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2008年11月20日

アルファからMINIイーター『MiTo』登場!

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今回はちょっと趣向を変えて、先日ヨーロッパで発表されたばかりのアルファロメオ待望の新作を紹介します。『MiTo(ミト)』と名付けられたこのコンパクトハッチは、147よりもさらに小さく、現行アルファのラインナップの中でも最小のモデルとなります。

アルファのエントリーモデルといえば、ちょっと古いところではアルファ・スッドがその役割を果たし、ひと世代前あたりでは145/146がそれにあたりますが、145/146が147へとモデルチェンジするにあたって、サイズ的にもグレード的にもひとクラス上がってしまったため、ここしばらくは空白が続いていたところです。
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このところのアルファといえば、国内では156の大ヒット以降、すっかりナリを潜めてしまった印象でしたが、500の復活で俄然勢い付いてきたフィアットオートは、その流れに乗ってスポーツブランド、アルファロメオの方も一気に立て直しに掛かるようです。ミトはアルファ復活の旗手として、まずは依然BMWミニの独り勝ちが続いているプレミアムコンパクトのセグメントを切り崩しに掛かる、フィアットの第二手となるはずです。

ミトのプラットフォームは、フィアットグループの兄弟車、グランデプントをベースとしたもので、全長4.06m全幅1.72mとサイズ的にもまさにBMWミニとガチンコです。3ドアハッチというボディタイプの設定もミニと被ってきますが、ボディサイズ(特に全長とホイールベース)をミニよりも大きく設定することで、ミニの最大の弱点ともいえる後席スペースの狭さを解消してきたあたり、ライバルをよく研究してきた成果といえるでしょう。
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肝心の走りの性能についても、スポーツテイストはアルファのお家芸ともいえますから期待していいと思います。基本レイアウトは、もちろんプントと同じFFとなりますが、シャシーについてはかなり改良が加えられ、よりスポーティなキャラクターに設定されるようです。注目のエンジンについては、ガソリン2機種、ディーゼルが1機種、設定されていますが、現状では日本へ導入されるのはガソリンエンジンのみとなるでしょう。

そのガソリンエンジンは、プント・アバルトや最新の500アバルトにも搭載される1.4リッター直4ターボを筆頭に、同じく1.4リッター直4のNA版が用意されます。ターボで155ps/230Nm、NAで78ps/120Nmと見事に倍近い差がありますが、ミニに対抗するにはこれくらいパワフルでないと厳しいかもしれません。ただ、アルフィスタな人にとっては、ターボのアルファって……、とちょっと不満かもしれませんね。
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そんなわけで、この新しいアルファ、価格次第では再び日本でもブレークしそうな予感がします。500での絶妙な値付けを考えると、フィアットオート・ジャパンのさじ加減ひとつで、いいところに行くのではないでしょうか? あとはこのスタイリングとミトというちょっと微妙なネーミングが受け入れられるか、というあたりがポイントとなりそうですが。
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2008年11月05日

次期VWゴルフの全貌が見えてきた! その2

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新型ゴルフの前座たるシロッコが正式に発表されたところで、いよいよゴルフ6もその全貌が明らかになってきました。正式なプロダクションモデルは、10月に行われるパリショーで発表される見通しですが、それに先立って先行試作車といえる段階の非常に完成車に近いレベルのスタイリングが発表されました。

そのデザインは、前回取り上げたシロッコのデザインモチーフが色濃く反映されたもので、VW車の新たな方向性を決定付けるものだといえます。そのスタイリングはシンプルかつクリーン、それでいてスポーティさと張りつめた緊迫感を感じさせるものです。シンプルという意味では、かつてのゴルフ4を思い起こさせるほどにプレーンな印象ですが、それはゴルフ4のようなのっぺりとした感じではなく、躍動感を内に秘めた感じとでもいいましょうか。
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またゴルフ5では、その肥大化したボディをさらにボリューム感があるように見えてしまっていたのが、新型ではそれとほぼ同じディメンションながらも、大きすぎる感じを与えない点も好印象です。ゴルフ5といえば、新型の基本コンポーネンツはほぼ先代のそれを踏襲するようです。実際、シャシー性能ではクラスを越えた高い安定感を見せたゴルフ5だけに、今作でもそのアドバンテージはまだまだ有効といえそうです。ただ、ゴルフ5ではあまりにも懲りすぎて開発・生産にコストが掛かりすぎたという話も聞かれますから、その分を新型で回収する必要があったという内情もあるのかもしれません。

エンジンやミッションについても、基本的には現行モデルからのキャリーオーバーとなります。エンジンタイプは本国仕様で、ガソリン4機種、ディーゼル4機種が設定され、それに組み合わされるミッションは、発生トルクによって湿式クラッチの6速DSGと乾式クラッチの7速DSGがそれぞれ採用されます。

メカニズム面でのポイントとなるのは、“ノーマル”“スポーツ”“コンフォート”の3つのモードを備えたアダプティブ・シャシー・コントロールを採用した点でしょうか。これはダンパーのセッティングだけでなく、パワステのアシスト力や電制スロットルのマッピング、ABSのコントロールまでも含めたトータルでのシャシーコントロール技術で、ドライバーは任意のモードに合わせた最適なシャシー、エンジン、操舵、制動のフィールが手に入れられるというものです。まぁ、もちろん、これもシロッコに次ぐ採用となるものではありますが。
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それ以外には、車内の静粛性にもこだわった装備が採用されている点もポイントです。まず、フロントガラスには防音素材をラミネートした特殊ガラスを採用。ドアとサイドウィンド間のモールも、より隙間を狭める工夫が施されるほか、風切り音を抑えたドアミラー形状やエンジンルームの遮音対策など、徹底して車内への騒音の侵入を防ぐ処置が施されています。このあたりは、日本メーカーのお家芸ともいえますから、VWがどこまでそこに迫っているのか、お手並み拝見というところでしょうか。

こうしてみると、メカニズム面ではゴルフ5のときほどのインパクトはありませんが、デザインや方向性など、トータルで見れば、新型のゴルフはVWの歴史においても大きなターニングポイントとなることは間違いないでしょう。あとはそれが他の自動車メーカーにどのような波紋を投げかけるのか、今後注目してゆきたいところです。
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2008年10月15日

次期VWゴルフの全貌が見えてきた! その1

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Cセグメントの世界基準車とも呼べるVWゴルフが、いよいよ6代目へとモデルチェンジを迎えます。その全容には、世界中の注目が集まっているわけですが、今回は新型ゴルフを知る上でも重要なポジションを占める注目のモデル、VWシロッコについてまず紹介したいと思います。

シロッコとはまた懐かしいネーミングを、と思われた方も、結構いるのではないでしょうか。もともとシロッコは、’70〜’80年代に当時のゴルフをベースに、スポーティな3ドアハッチバックへと仕立てられたモデルで、ジウジアーロ・デザインの初代、そしてVW社内デザインによるシャープなスタイリングの2代目とも、リーズナブルなプライスながら抜群のハンドリング性能を実現したことで、人気を博しました。
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シロッコは’93年頃まで生産されていましたが、その後VWのスポーツハッチはコラードと名称を変え、やがてそのコラードも生産が終了したことで、ここ最近はその系譜も途絶えたままとなっていました。それが’06年のパリ・モーターショーで発表されたコンセプトカー『アイロック』の登場によって、いよいよ復活の兆しを見せたのです。

アイロックと全く新しい名称が与えられていたものの、3ドアハッチのスポーツモデルとなれば、名称はともあれ、サイズ的にもゴルフベースとなることは明白です。しかも、タイミング的にはすでに現行のゴルフ5もデビューから3年ほど経過し、ここ最近の6年置きというモデルサイクルからすれば、その開発は次期ゴルフと平行して行われるはず。そんな諸々の事情を考えれば、アイロックの市販モデル、実際にはそれが新型シロッコとなったわけですが、こそ次期ゴルフへの布石と読むことができるわけです。また、昔のシロッコ自体がベースとなるゴルフより一歩先んじて発表され、市場の反応をうかがう役割を持っていたことからも、やはり同様のことが推察されます。
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さて、そんなシロッコですが、注目したいのがそのスタイリングです。アイロックでは、現行VW車のワッペングリルをさらに強調したような個性的なフロントグリルが目を引きましたが、発表された市販バージョンのシロッコのフロントマスクは現行のVWモデルとは全く異なり、非常にプレーンなデザインとされました。これはゴルフはもちろん、今後のVW車の目指す方向性を探る上でも、重要なポイントとなる部分だと思います。
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近年のVWは高級路線へと向かっており、外観からも例のワッペングリルなどからそうした傾向を見て取ることができます。しかし、アウディというプレミアムブランドを持つVWアウディ・グループにとって、同じ系列内に似たようなラインナップを持つ高級車ブランドが並立することは必ずしも好ましい状況とは言えないのではないでしょうか。そこで、VW本来の“国民車”へと戻る意味も込めて、今後のVWはよりベーシックな方向性へシフトする。そんな意味合いがシロッコのデザインに込められているのではないかと感じられます。
ただ、シンプル、ベーシックとはいっても、それはデザイン的なものであって、クルマの出来としてはこれまで以上に研ぎ澄まされてくることが予想されます。実際、シロッコの内外装の仕立てを見てみても、アウディに迫るのではと思わせるほどのクオリティが感じられるだけに、次期ゴルフにも期待が高まります。
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2008年09月15日

次世代SUVの世界〜アウディQ5編

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新型A4の成功やディーゼルエンジンのラインナップ拡大、そしてスポーツモデルの追加など、ますます波に乗っているアウディが、今まで少し手薄だったSUVのジャンルへもその触手を伸ばし始めました。Q5と名付けられた新型のSUVは、新型A4のシャシーをベースにSUVへと仕立てたモデルで、アウディのラインナップにおいてはQ7の弟分に当たります。

Q5が属するミディアムクラスのプレミアムSUVというジャンルには、現在ライバルとしてBMW X3やランドローバー・フリーダンダーが控えていますが、先日取り上げたメルセデスのGLKやVWのティグワンが導入されるなど、今後ますます競争の激化が予想されるクラスです。そんな中にあって、アウディのQ5はどのような位置づけとなるのでしょうか。
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まずスタイル的な特徴についてですが、全体的な造形はまさにスモール版Q7といったところでしょうか。アウディには、ワゴンボディをベースに車高を上げたオールロードクワトロもありますが、Q5は全高も高めなトールスタイルです。そうはいっても、この手のSUVモデルによく見られる樹脂パネルむき出しのオフローダー的な装飾はなく、フルカラードバンパーが採用されることからも、どちらかというとオンロードに向けた最近流行りのクロスオーバータイプといえます。

スタイリングに関しては、標準モデル以外にも2つのパッケージオプションが設定されます。まず「Sライン」はセダンモデルなどにも採用されるスポーティなエアロを纏ったパッケージで、よりオンロード性能を重視した設定となります。もうひとつの「オフロード・パケージ」はその名の通り、オフローダー的な味付けを施した仕様で、前後バンパーの下部にアンダーボディ・プロテクションパネルが装着されるなど、ワイルドな外観が特徴です。
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エンジンは最近のアウディを象徴するように、3.0リッターV6と2.0リッターターボの2種類のディーゼルがメインで、ガソリンエンジンは2.0リッター直噴ターボが1機種のラインナップとなります。現状では、まだアウディがディーゼルモデルを日本へ導入してくるとは考えられませんから、日本へ導入されるとすれば、当初はこのガソリンエンジン一本となる見込みです。また、これは少し先の話となりそうですが、アウディでは現在開発を行っているリチウムイオン・バッテリー搭載のハイブリッド仕様をこのQ5に初めて設定してくるのでは、とも言われています。
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また注目なのは、新開発の縦置きエンジン用7段Sトロニックが、Q5で初めて採用される点です。VWのDSGと同じツインクラッチシステムのシーケンシャルミッション、Sトロニックは、現在のところTTやA3といった横置きエンジン用に6速タイプが採用されていますが、A4などの縦置きエンジンに対応したバージョンは未だ設定されていませんでした(R8でさえシングルクラッチのメカMTです)。アウディでは、この縦置きエンジン用SトロニックをQ5を皮切りにA4などにも順次採用してゆくはずです。そうした意味でも、Q5の出来はかなり注目といえそうです。

さて、あとはこのQ5がいくらぐらいで販売されるか、という点がポイントとなりますが、A4ベースということやライバルモデルの価格帯を考えると、日本ではベースグレードが500万円を切るくらいの設定となってくるのではないでしょうか。フリーランダー2が400万円、X3がやや高めの560万円ということを考えると、そのあたりに設定されてくると日本でもちょっと面白いことになりそうです。今後はさらにコンパクトなSUV、Q3も登場するのでは、と噂されているだけに、アウディの勢いはまだまだ止まることを知らないようです。
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2008年08月25日

次世代SUVの世界〜ボルボXC60編

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前回の記事でも取り上げたように、今後プレミアムSUVの市場において、欧州メーカーを中心とした激しいシェア争奪戦が繰り広げられることが予想されます。そこで今回からは、これからデビュー予定の注目のSUVモデルについて取り上げてゆきたいと思います。まずは、このジャンルのパイオニアともいえるボルボの次の一手から見てみましょう。

昨年、新型のV70、そしてXC70をデビューさせたボルボですが、それに続くモデルとして今年の秋以降にデビューを予定しているのがXC60です。60というモデルネームからすると、セダンボディのS60が思い浮かべられますが、写真の通り、XC60はトールスタイルのSUV、言わばXC90のコンパクト版のように見えます。
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ただ、ボディ後半に向けてなだらかに傾斜するルーフなどからは、BMWのクーペライクなSUV、X6のようなスポーティなイメージも見て取れます。つまり、SUVとはいえ、その狙いは最近流行りのシティ・オフローダー的なノリにあるのではないでしょうか。

そのボディサイズを見てみると、3サイズは全長4628mm×全幅1891mm×全高1672mm(レール含む)となっています。これは、新型のXC70と比べると約200mm短く、約70mm高く、XC90(全長4810mm×全幅1910mm×全高1780mm)と比べると全幅はあまり変わらず、全長と全高を少しずつ詰めたようなスタイルであることが分かります。
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まぁ、確かにXC70とXC90の中間的キャラクターといえなくもないのでしょうが、こうなってくるとだいぶ差別化が難しくなってくるような気がします。何しろ、この3モデルは基本的にはすべて同じシャシーから派生しているのですから。ちょっと話はそれますが、ボルボは結構ラインナップが豊富なように見えて、その実ベースは同じというパターンが非常に多いのです。

このラージプラットフォーム系でいうと、S80用にまず開発され、それをベースにXC90を開発。さらに新型のV70もこのプラットフォームを使い、XC70、XC60を派生させたというのが、その経緯となります。流れでいえば、先代でも同様にS80、V70/S60、XC70という順に同じプラットフォームを使い回していますから、現行も同じやり方をしたものです。その結果、ボルボのミドルクラス以上のモデルはみんな全幅が1900mm近くとうすらデカくなってしまったのですが……。
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本題に戻って、ボルボがプレミアムSUVのジャンルにこれだけ力を入れる理由について考えてみましょう。2006年のボルボの世界累計の販売台数は約43万台、そして昨年が約46万台でしたが、このうち最も台数が多かったのが、なんとXC90だったのです。’06年で8万5千台、’07年で7万9千台と、エントリーモデルのS40やV50よりも売れています。利益率なども考えれば、高額モデルの販売を伸ばす方が会社としてはおいしいわけで、すでにデビューから5年以上が経過し、やや売れ行きが鈍ってきたXC90に代わって、新たなカンフル剤となるモデルが必要となってきたということではないでしょうか。

環境問題や原油価格の高騰などもあって、世界的に見ると特に北米を中心にフルサイズSUVの販売はすでに頭打ちとなっているようですが、ことプレミアムSUVのジャンルにおいてはそうした影響はあまり受けていないようで、今後も引き続き成長が期待されている状況です。XC60はまさにそうした富裕層を狙ったボルボの新たな一手となります。今後、フォードからの身売りが確実視されているボルボ・カーズが、これでうまい具合にどこかに収まってくれればいいのですが。
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2008年07月15日

BMW 3シリーズがよりスポーティにリニューアル

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メルセデスCクラスやアウディA4らスモールセダンのメジャーが続々とフルモデルチェンジを行い、その性能に磨きを掛けてきたのを受けて、いよいよ先発のBMW 3シリーズもマイナーチェンジを実施し、ライバルたちの追撃を突き放しにかかります。現行の3シリーズデビューが2005年のことですから、3年をおいたマイナー変更ということで、タイミング的にもまず順当な時期といえるでしょう。

このマイナー変更で手が入れられたポイントは、まず外装のデザインです。5シリーズにはじまり、Z4、X6と近年のBMWがアクの強いデザインを採用しているのに比べて、3シリーズだけは比較的コンサバなスタイリングとされていました。それがいよいよ精悍で、スポーティな最新BMWルックへと生まれ変わります。
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ボンネットには、くっきりと際立つプレスラインが入り、シャープさを引き立てるとともに、その流れを受けてフロントバンパーも、彫りが深く、立体的な造けいが施されています。それと合わせて、ヘッドライトやキドニーグリルの形状も変更され、フロントマスクはますますスポーティなイメージを高めました。サイドからリアにかけてのデザインは、それほど大きな変更点は見られませんが、サイドのキャラクターラインがより明確になるなど、全体としてエッジの効いた印象が高まっています。
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ただ、今回のマイナー変更で一番注目のポイントとなるのはエンジンです。といっても残念ながらメインはディーゼルですので、日本のユーザーにはあまり朗報とはいえませんが……。そのディーゼル、欧州では4気筒の318d、320dにはじまり6気筒の325d、330d、335dとガソリンエンジン同様、5機種がラインナップされます。中でも注目なのが、直6シングルターボ仕様の330dです。

ガソリンエンジンでは、もはやオールアルミが当たり前ですが、ディーゼルではこれまでのところ、アルミヘッドに鋳鉄製ブロックという組み合わせが定番でした。ところが、330dではついにアルミブロックが採用されたのです。ガソリンエンジンと比べて、圧縮比も過給圧も大幅に高いディーゼルでは、当然かなりの強度が必要とされるため、なかなかアルミブロックの採用は難しかったのですが、BMWではいよいよこの直6を皮切りにディーゼルもアルミ化を進めてゆくようです。
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アルミブロックの最大のメリットは、何といっても軽量に仕上がる点で、エンジンの性能が全く同じだとしても、運動性能、燃費性能などすべての面で軽い方が有利になります。特に最新のディーゼルは、ターボチャージャーと組み合わされることが多く、どうしてもエンジンアッセンブリーが重くなりがちでした。このことは、BMWがこだわる前後重量配分的にも理想的とはいえない要件でしたから、ブロックのアルミ化によってますますディーゼルモデルの魅力が高まることは間違いありません。もちろん、この新ディーゼルは性能の面でも進化を遂げ、以前よりも14psと20Nmの向上を実現した245ps/520Nmのパワー・トルクを発揮しますから、スポーティな走りを楽しむにも全く申し分のない性能を発揮します。

そんな魅力的なBMWディーゼルですが、今のところまだ国内へ正式に導入される見込みは薄いようです。2009年に日本国内の排ガス規制がさらに強化されますから、それをクリアできる見通しが立てば、いろいろなメーカーが参入してくるのでは、と思われますが。ともあれ、このNEW 3シリーズ、国内へは09モデルとして早ければ秋ごろには導入される見通しです。
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2008年06月30日

変わるプレミアムSUV勢力図

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以前の記事でメルセデスの新たなSUVモデル、GLKのコンセプトモデルについて紹介しましたが、先日の北京モーターショーにおいて、いよいよその正式なお披露目が行われました。実はその少し前には、GLKの兄貴分のモデルともいえるMクラスもマイナーチェンジを受けており、内外装の意匠変更を行うことで、より高級感とスポーティなイメージを高めたスタイルへとリファインされたばかりでした。

こうしたメルセデスの一連のSUVラインナップ強化の背景には、ライバルメーカーを追撃するという目的があるように思われます。というのも、今年に入ってからこのプレミアムSUVのセグメントというのは、にわかに活況を呈しはじめているからです。
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まず、BMWでは昨年SUVの中心的モデル、X5がフルモデルチェンジを受け、勢いをつけてきたのに加えて、いよいよ昨年のモーターショーでも話題となっていたスタイリッシュSUV、X6の販売が欧州で開始されます。X6は、5シリーズに対する6シリーズのように、基本設計はX5と同じながらも、クーペライクなスタイリングを採用することで、SUVに新たな魅力を追加したモデルです。

GLKでもオンロード性能に重点を置いたシティローダー的グレードが設定されていることからも分かるように、各メーカーともSUVといえどもタウンユースが圧倒的に多い現状を踏まえて、よりオンロード志向に味付けしたモデルをラインナップするようになっています。こうなってくると、もうSUVであることの意味もよく分からなくなってきますが、BMWではSUVではなくSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)を名乗り、早いうちからオンロード色を強めたキャラクターを売りにしていたほどです。X6はまさにその極みといえるかもしれません。
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乗用車ベースSUVといえば、その元祖ともいえるボルボの動きも見逃せません。昨年、その主力モデルであるV70シリーズをフルモデルチェンジし、早速そのSUVバージョンたるXC70もラインナップしてきましたが、今年になって新たに追加されたのが、XC60という全く新しいモデルです。ボルボのネーミングの方程式からすれば、偶数のモデルはセダンタイプとなるはずですが、このXC60はS60のSUVバージョンというよりもXC90のスモール版といった趣のモデルです。

XC70はステーションワゴンの車高アップ版としてすでに確固たる地位を固め、XC90ではずんぐりとしたシルエットが与えられたことで、室内空間を確保したミニバン的な要素も兼ね備えています。ただ、XC90ではボディが大きすぎるというのも事実です。それならば、人気のあるV70サイズのボディで、XC90的キャラクターを持ったモデルならば、もっと需要が伸びるのでは? そんな考えから生まれたのが、このXC60ではないでしょうか。すでにフォードグループの中でもその地位が危ぶまれているボルボは、ネーミングの方程式など構わずに、売れそうな派生モデルの追加によって何とかこの急場をしのごうと躍起になっているのかもしれません。
そんな火の車のボルボを尻目に、同じようなコンセプトでニューモデルを追加してきたのが、アウディです。Q5と名付けられたこのミドルクラスSUVは、成功をおさめたQ7のスモール版ということで、満を持しての登場です。ベースは評判の高い新型A4ですから、こちらも間違いなく売れるはずです。同じグループのVWからは、ティグワンも発売され、もはやこのクラスも群雄割拠の状態で、今後まさにメーカー間の生き残りを掛けた熾烈な競争が繰り広げられてゆく模様です。
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2008年06月01日

A&Bクラス未来予想図

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先日、ドイツで行われた“オートモービル・インターナショナル”において、AおよびBクラスのマイナー変更が発表されました。コンパクトクラスは、このところ話題が少なかっただけに、今回はちょっとこのネタを含めて、今後のメルセデス・コンパクトの方向性について取り上げてみたいと思います。

まず、今回のマイナー変更の内容についてですが、パッと見たところでは内外装の意匠変更というのが目につきます。そうはいっても、前回のSLほど大胆な変更というわけではなく、フロントバンパーやヘッドライト、グリルまわりがよりスポーティな印象になったり、ドアミラーの大型化やアルミホイールのデザインがより洗練されたといった小変更にとどまります。内装についても、ファブリックやトリムデザインの変更、センターコンソールの荷物置き場が少し広くなった、というのがその主な変更内容です。
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それよりも、メルセデスが一番に力を入れてきたのが、環境性能の向上という面です。メルセデスでは、近い将来にさらなる燃料消費の低減と低エミッション性を実現すべく、“BlueEFFICIENCY”と名付けられた公約を掲げています。新型のAおよびBクラスでは、そうしたメルセデスの活動を推進すべく、新たに3タイプのローエミッション・モデルが追加されます。

まずA160CDIは、最新のディーゼルテクノロジーをつぎ込んだ新世代ディーゼルエンジンを中心に、空気抵抗の低減やオルタネーターの作動管理などによって、22km/lという好燃費を実現しています。A150/B150およびA170/B170のMTモデルには、いわゆるアイドリングストップ機能が追加されます。ギアをニュートラルにシフトし、極低速でブレーキを踏んでいる状況において、自動的にエンジンをカットするこの機能は、6.5%以上の燃費改善を可能にするものです。
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そしてもうひとつが、ガソリンと天然ガスのどちらの燃料でも走行が可能なB170NGT BlueEFFICIENCYです。天然ガス用のタンクは16kgの容量を持ち、天然ガスだけでも約300kmの走行が可能ですが、ガソリンと併用することで、なんと1000kmもの航続を可能にするといいます。いずれのモデルもLEVとしてはなかなか魅力的ではありますが、よくよく見てみると、どれも日本には導入されなそうなモデルばかりなのが残念ではあります。

ところで、Aクラスといえば、上記の天然ガス併用エンジンだけでなく、燃料電池やハイブリッドなど、様々な可能性を試す目的と衝突安全性能を兼ね備えた設計として、例のサンドイッチ構造フロアが特徴となっていますが、どうやらこの特殊なボディ構造は現行モデル限りとなる見通しが高いようです。
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独自のサンドイッチ構造は、モデルバリエーションの展開が難しいこと、そして今後その可能性が議論される他メーカーとの協業という点を考え併せても、不利な点が多いからです。特にモデルバリエーションという意味では、今後ますます世界的な需要の高まりが予想されるコンパクトSUV的なモデルの追加が期待されるわけですが、そうなると4WD化も視野に入れたボディ構造が必要とされるからです。

メルセデスのこだわりが生んだ画期的なサンドイッチ構造フロアというボディ構造は、確かに斬新なアイディアだったはずですが、それを十分に活かし切ることなく消えていってしまう、と考えると少々残念ではあります。またそうなると燃料電池車のベースは? といった問題も浮上してくるだけに、メルセデスとしてもなかなか頭の痛い問題なのかもしれません。
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2008年05月13日

アウディスポーツの逆襲 その2

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S5、TTS、RS6 Avantと怒涛のハイパワーモデルラッシュを続けてきたアウディですが、その最終兵器ともいえるのが、今年のデトロイトショーで発表されたR8の最強バージョンコンセプト、R8 V12 TDIです。そこに搭載されていたのは、なんと6.0リッターV12ディーゼルエンジンです。

アウディのV12ディーゼルといえば、2006年のル・マン24時間レースに登場し、ディーゼルエンジン搭載車として初めて総合優勝を飾ったレーシングカー“AUDI R10”に搭載されたエンジンが有名ですが、R8に搭載されるのはまさにその流れを汲んだエンジンです。もちろん、ロードバージョンのV12ディーゼルはレース用エンジンとは全く別物ですが、アウディのレースイメージを牽引するV12ディーゼルを、市販モデルの中で最も強烈にアウディのスポーツ性をアピールするR8に搭載してきたことは、かなりのインパクトを与えています。
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何しろディーゼルとはいえ、排気量5934ccのV12エンジンに、ターボチャージャーを2機掛けしたこのエンジンは、500ps/102kg-mのパワー・トルクを発揮するのですから、並みのガソリンエンジンでは全く太刀打ちできない圧倒的な動力性能を秘めています。実際、R8の市販バージョンが搭載する4.2リッターV8エンジンでは、最高出力こそV12 TDIに迫る420psを発揮しますが、最大トルクでは43.8kg-mとその半分にも届きません。実際、102kg-mという強大なトルクをなんと1750rpmから発揮するV12 TDIエンジンの加速力というのはちょっと想像できません。これに迫るトルクを発揮するのは、ブガッティ・ベイロンくらいなものでしょうか。
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ところで、このR8 V12 TDI、さすがに市販化の見込みは薄いだろうというのが、もっぱらの噂ですが、実は先日のジュネーブショーでも新たにこのV12 TDIエンジン搭載車が発表されたことで、俄然現実味を帯びてきています。そのモデルとは、SUVのQ7です。
実はロードカーにこのV12ディーゼルが初めて搭載されたのが、Q7のコンセプトモデルでした。レーシングカーR10の発表と前後して、アウディでは同じV12ディーゼルをQ7に搭載して、ちょっとしたセンセーションを巻き起こしました。もちろん、このクルマは完全なショーモデルではありましたが、実は一部のプレス向けに試乗を行うなど、すでに市販化も視野に入れた開発が行われていた模様です。
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そして今年に入って、デトロイト、ジュネーブと2つの大きなモーターショーで、2台のV12ディーゼル搭載車を出展してきたということは、このエンジンの市販化がだいぶ現実的な話になってきたということではないでしょうか。しかもQ7 V12 TDIをわざわざ今更引っ張り出してくるということは、いよいよ……? ということかもしれません。いずれにしても近い将来に、R8にハイパフォーマンスバージョンが追加されるのは確実で、大方の予想としてはシャシーを共用するガヤルドと同じV10という見方が濃厚ですが、ひょっとしたらR8 V12 TDIというとんでもないモデルが実現するのかもしれません。そうなれば、パフォーマンス面では他のスーパースポーツに引けをとっていたR8も、俄然スーパーカーリーグの代表格へと躍り出てくるはずです。今のアウディの勢いなら、それくらいやりかねないかな、という気もします。
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2008年04月27日

アウディスポーツの逆襲 その1

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スーパースポーツ、R8のデビューを皮切りに、A5、A4とますますスポーティなキャラクターを強めてきたアウディ、その勢いはまさにとどまるところを知らないようです。これまでアウディのスポーツモデルといえば、S4やS6に代表されるSシリーズ、そしてそれらをさらに過激にチューンナップしたRSシリーズという布陣で展開してきました。最近では、ラグジュアリークーペの5シリーズをベースに、4.2リッターV8直噴エンジンを搭載したS5がデビューしたばかりですが、その快進撃はさらに続く模様です。

今後、日本へ導入が見込まれているスポーツモデルとしては、まずTTSがその筆頭に挙げられます。従来のSシリーズとはややネーミングの法則(Sにクラス名を表す数字が続く)が異なるため、ちょっと分かりにくいですが、スペックなどから見ても、Sシリーズ級のスポーツバージョンであることは間違いありません。
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注目は何と言ってもそのパワーユニットですが、TTSにはレギュラーモデルにもある2.0リッターTFSIエンジン、すなわち2リッター4気筒直噴ターボをベースに、より大型のターボチャージャーを装着することでパワーアップを実現したエンジンが搭載されます。もちろん、これは大方の予想どおりTTと基本骨格を共にするA3のSバージョン、S3(日本には残念ながら導入されていませんが)とほぼ同じ仕様です。S3が265ps/350Nmを発揮するのに対して、TTSではやや最高出力を高めた272ps/350Nm仕様のエンジンを搭載、パワートレーンはお得意の4WDシステム、クワトロが採用されます。
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そしてこれに続くのが、アウディ・ハイパワーモデルの筆頭株、RS6 Avantです。RS6といえば、アウディ史上最強を謳った4.2リッターV8ツインターボエンジンを搭載した先代モデルの印象が未だに強烈に残っています。そして今回のRS6では……、すでに登場しているS6がNAの5.0リッターV10直噴エンジンを搭載していることからも想像がつくように、なんとそのV10エンジンに再びターボチャージャーを2機掛けするというそら恐ろしいエンジンが搭載されてきたのです。
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そのパワースペックは、580ps/650Nmという途方もない数値で、実にパワーウェイトレシオで3.4kg/psというスーパーカーも真っ青な加速性能を実現しています。もちろん、そのパワーはクワトロシステムで余すことなく路面に叩き込まれ、あの巨大なアヴァントボディを停止状態からわずか4.6秒で100km/hにまで加速するというのです。いったい誰がこんな激速のワゴンを必要とするのか、全く理解不能ですが、まさしく世界最速のワゴンであることは間違いありません。
あのクールなまでに理性的なアウディをして、何がここまでパワーウォーズへと駆り立てるのかは分かりませんが、実はこの後、さらに目を疑うような驚愕のマシンが控えているのです。
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2008年04月01日

メルセデスのラインナップの穴を埋める新たなモデル「GLK」

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コンパクトカーからセダン、ミニバン、スポーツカーとまずます広がりを見せるメルセデスのラインナップに、また新たなモデルが追加されるようです。先日のデトロイトショーで発表されたコンセプトカー『ヴィジョンGLK』は、従来のMクラスよりもひと回り小さなコンパクトSUVに位置づけられるもので、現行のメルセデスのラインナップにはない新たなモデルとなるはずです。

コンパクトSUVというジャンルは、国産車ではトヨタRAV4やスズキ・エスクード、ホンダCR-Vなどが含まれ、世界的に見ても今後さらに需要が高まる分野だと思われます。メルセデスが目指すのは、そうした中でもBMW X3や先日の東京モーターショーで発表されたVWティグアンなど、コンパクトでありながらも上質感を持ったプレミアムSUVというクラスになるのではないでしょうか。

このヴィジョンGLK、メルセデスの発表では、Gクラスのデザインモチーフを取り入れ、それを現代風にアレンジしたモデルとされていますが、その名称からもイメージさせるように、GLクラスのスモール版と考えるのが妥当だと思います。デザイン云々にしても、GクラスというよりはGLやMクラスの流れを汲む、ここ最近のメルセデスのデザインフォーマットに則ったものであることは疑いようがありません。後継モデルたるGLクラスを売り出したにもかかわらず、あまりの人気ぶりに依然製造を中止することができないGクラス、それならばそのイメージを借りて新モデルの販売戦略に繋げようという意図が、そこにはあるのかもしれません。
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メカニズム的な部分については、ボディサイズなどから考えても、新型Cクラスがそのベースとなっているはずです。BMWのX3・X5に代表されるようにセダンをベースにSUVを仕立てるという開発手法は他のメーカーではよく見られる手法ですが、メルセデスでは初となる試みだけに、どれほどのレベルでそれが仕上がるのか、ちょっと注目したいところです。
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またヴィジョンGLKでは、SUV的な仕立ての「フリーサイド」とオンロードユースにターゲットを絞った「タウンサイド」という二つのバリエーションを設定した点もユニークです(もっともスバル・フォレスターもオンとオフの2タイプをラインナップしていますから、全く新しい試みという訳でもありませんが)。SUVとはいっても、こうしたシティオフローダー的なモデルでは、未舗装路を走る機会というのはますます少なくなってくるはずですから、あえてオフロード性能は捨てて、オンドードでの使い勝手を高めるという割り切りは、市場のニーズにあったものだと思います。
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このヴィジョンGLKは、ショーモデルとはいってもすでにかなり市販モデルに近いレベルにまで仕上がっているように見えますので、こうしたSUVモデルの最重要拠点である北米を皮切りに、近い将来には発売が開始されるのではないでしょうか。ただ、個人的にはちょっとこのデザインは微妙な感じもするのですが、いかがでしょうか?
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2008年03月17日

FRメルセデス入門モデルがスポーティにリニューアル

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A、Bクラスを除くメルセデスのエントリーモデルとして、女性や比較的若いユーザーに人気だったCクラスベースのハッチバックモデル、スポーツクーペが、『CLC』と名前を替え、新たなモデルとして登場します。

初代(というか一代限りの名称となりましたが)スポーツクーペは、ベースとなるCクラスからリア周りを中心に大幅にボディ形状やデザインが変更され、Cクラスとは別物と呼べるほど作りかえられたモデルでした。内装は明るめの色使いを採用し、シートポジションもスポーツカーっぽく低く座らせるような設定となっていて、メルセデスのラインナップにおいてはちょっと異色の存在でしたが、日本での人気はイマイチだったようです。どうやら日本でのメルセデスのイメージとスポーティなハッチバックスタイルというのが、あまりマッチしていなかったのではないでしょうか。

ただ、新型となったCクラス自体がスポーティな方向へとシフトし、日本でもそれが好意的に受け取られていることから考えると、そのスポーツ路線をさらに際立たせる今回のCLCは、ひょっとしたらひょっとするかもしれません。実際、写真で見るCLCのスタイリングは、Cクラスのアバンギャルドと同じくエンブレム内蔵グリルをベースとしたフロントマスクを採用していますが、Cクラスですでにこのデザインを見慣れているせいか、先代のスポーツクーペほど違和感がなく、逆に本家Cクラスよりも似合っているように見えるから不思議です。
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リアまわりの意匠もセダンのテールレンズデザインを踏襲しつつ、よりシャープなラインでスポーティなイメージを強調しています。数年前までの日本では、コンパクトモデル以外は壊滅的に売れていなかったハッチバックモデルですが、このところトヨタ・ブレイドやスバル・インプレッサ、マツダ・アクセラなどの登場によって、少しずつ盛り返してきている印象があります。そんな中で、プレミアムな雰囲気と適度なスポーティさを併せ持ったCLCのキャラクターというのは、意外と日本でも受けそうな気がします。

さらにこのCLCは、走りの面でもちょっと期待できそうなのです。その基本設計はもちろん、現行のW204型Cクラスがベースですが、先代のスポーツクーペがホイールベースはそのままに、主にリアのオーバーハングを切り詰めることでハッチバックスタイルを実現していたのに対し、CLCではホイールベースを45mm、全長では133mm短縮されています。つまり、先代はスタイルはスポーティでも、走りの基本はセダンとほぼ同じだったのに対し、CLCでは室内の居住スペースを少し犠牲にしてでも、スポーティなハンドリング特性に振ってきたと考えられます。オプションで先のマイチェン後SLKで初めて採用されたダイレクトステアシステム(車速感応型の可変ステアリングギアレシオ機構)が採用されるというのも、そうしたスポーツ志向の表れと見ることができると思います。

このクラスには現在、BMW1シリーズやVWゴルフ、アウディA3、フォード・フォーカスなど、並みいる強豪がライバルとして控えていますが、今回のCLCは、それらの牙城に食い込むことができそうなモデルとして、期待できるのではないでしょうか。
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2008年02月15日

メルセデスベンツ SLKがより精悍なマスクにフェイスリフト

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2004年にデビューした2代目SLKが、初のビッグマイナーを迎えます。革新的な電動メタルトップ『バリオルーフ』で好評だった初代SLKは、全世界で31万台を売ったヒット作となりました。それに続く2代目もSL-Rマクラーレンのデザインモチーフを取り入れたダイナミックなスタイルによって、これまでに18万台以上が販売され、ヒット作の続編モデルとしてはなかなかの好調ぶりを見せています。そして、デビューから4年を経た今年、さらなる攻勢を掛けるべく、そのアピアランスに磨きをかけてきたというわけです。

今回のマイナー変更の最大のポイントは、内外装のデザイン変更です。特に精悍さを増したフロントマスクおよびリアバンパーによって、外装のイメージは以前にも増してアグレッシブな雰囲気に生まれ変わりました。F1マシンのフロントウィングをイメージしたSL-R譲りのアローシェイプ・フロントマスクは、バンパー開口部のデザインを左右に独立した形状に変更することで、よりF1マシンに直結したイメージを引き出しています。写真では見えませんが、リアバンパー下部にはディフューザー形状を取り入れることで、リアビューもスポーティな印象を強めました。
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また、内装においても、センターコンソール周辺のデザインを、よりアップtoデイトなデザインへとリファイン。ステアリング形状などと合わせて、よりドライバーの操作性に留意した配置が取られています。その他、オーディオやテレマティクス系のシステムも、アップグレードされました。

では、メカニズム的な部分での変更はというと、実はあまり目立ったものはありません。エンジンバリエーションとしては、1.8リッター+スーパーチャージャーの200Kompressor、2.8リッターV6の280、3.5リッターV6の350、そしてAMGの5.5リッターモデルと変わり映えしません。唯一V6エンジンでは、高圧縮化やインマニの形状変更、バルブまわりの改良によって、3.5リッターエンジンで33psと10Nmの出力・トルクの向上と燃費性能の改善を実現したというのが、トピックとなります。
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少し面白そうなところとしては、ステアリングギアに可変機構を持たせた『ダイレクトステアシステム』をオプションで採用した点でしょうか(55AMGは標準装備)。これはBMWのアクティブステアなどのように特別なメカニズムを採用しているというものではなく、ステアリングラックギアの中立付近と先端部分とでギア比を変えることで、切れ角を変化させるというものです。直進時のように舵角の少ない状態ではギア比をスローに、ステアの操作量が多いときにはクイックに前輪が切れ込むように設定することで、機械的に可変ステアリングギアレシオ化を図ったもののようです。BMWのようにセダンモデルに採用するのはどうかと思いますが、SLKのようなスポーツモデルであればこうした機構はマッチするのではないでしょうか。

新型SLKの登場は、本国では今年の4月となりますから、日本へは早ければ夏前あたりには入ってくるかもしれません。このスタイルが気に入ったという人は、マイチェンモデルが入ってくるのを待ってみては?
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2008年02月05日

次世代ガソリンエンジンのトレンドは『直噴』 その2

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前回も紹介したように、今、ヨーロッパの各自動車メーカーではガソリンエンジンの直噴化に力を入れています。ひと昔前の日本メーカーの取り組みとその顛末を知る我々としては、何を今さら、という感もありますが、実はこの新世代直噴エンジンの開発にあたっては、ある新しい技術がそのベースとなっています。それは、最近進歩の著しいディーゼルエンジンのコアテクノロジーともなった精密燃料噴射技術です。

以前に新世代ディーゼルを紹介したときにも取り上げましたが、ピエゾ・インジェクターを核としたこの燃料噴射システムは、従来の燃料噴射インジェクターが一回の燃焼サイクルにおいて一回だけ燃料を噴射していたものを、複数回にわたって、それも各噴射タイミングごとに最適な量の燃料を噴射できるという高精度なインジェクションを実現しました。これによって、ディーゼルエンジンは排出ガスに含まれる有害成分を大幅に減少するとともに、ドライバビリティの向上や騒音、振動の低減を実現したわけですが、ガソリンの直噴エンジンにおいてもこれが大きなアドバンテージとなったのです。
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最新のガソリン直噴エンジンにおいても、以前の日本メーカーのように希薄燃焼の実現というのはひとつの大きな目標となっています。ただし、現状では希薄燃焼が実現できているのは、以前と同様に低負荷時の限られた状況だけとなります。それよりも、最新の直噴技術が生きてくるのが、通常のストイキメトリー燃焼(理論空燃費)においてより精密な燃焼コントロールができるという点にあるのです。

従来の吸気ポート噴射では、どうしてもポート内壁に燃料が付着してしまい、それが壁流となって燃焼室内に流れ込んでしまいました。そのため、燃焼室内に送り込まれる燃料の量を正確にコントロールすることは難しかったのですが、最適なタイミングで最適な量を直接燃焼室内に噴射できる直噴では、正確な空燃費制御が可能となったのです。ディーゼルでは1サイクルあたり最大で5回行われる燃料噴射は、ガソリンエンジンでは最大で3回に分けて行われているようです。
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また燃料を燃焼室内に直接噴霧することで、気化熱によって吸気温度を下げることができるのも直噴化の大きなメリットです。これによって、充填効率を高めることができ、トルク特性においてもアドバンテージが得られたのです。さらにこのことは過給機付きエンジンにおいても大変有効で、ノッキング限界を高めることができ、ハイコンプ化による低速トルクの確保やハイブースト化も可能にしています。VW・アウディやBMWでは、そうした直噴化のメリットを生かした過給器付きエンジンを実用化し、注目を集めているのはご存じの通りです。

もちろん、出力特性だけでなく、燃費性能という点においても、直噴によって空燃費を正確に制御できることで大きな成果が得られたことはいうまでもありません。メルセデスの最新直噴エンジン、350CGIでは、同じ3.5リッターV6エンジンに比べて、約10%の燃費向上と20psの出力向上を実現しています。

このV6エンジンで直噴化の感触をつかんだメルセデスでは、今後ますますガソリン直噴エンジンのバリエーションを増やしてくることでしょう。欧州ではディーゼルに圧され気味となってきていますが、まだまだ世界的に見ればガソリンエンジンの方が主流ですから、こうした新技術によるさらなる進化に期待したいものです。
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2008年01月16日

次世代ガソリンエンジンのトレンドは『直噴』 その1

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ハイブリッドに新世代ディーゼル、燃料電池など、今、世界中の自動車メーカーがガソリンエンジンに代わる新たな動力源として、様々なタイプのエンジン開発に取り組んでいます。では、これまで主役の座を堅守してきたガソリンエンジンは、このまま廃れていってしまうのでしょうか? そんな疑問に対するキーワードが、『直噴』だと思います。

日本で直噴エンジンというと、1990年代のミツビシGDIや日産NEO Diなどの名前がすぐに思い浮かぶかもしれませんが、実は現在ではいずれも事実上消滅してしまっているというのが現状です。そもそも当時の直噴エンジンが目指していたものとは、燃焼室内に直接高圧の燃料を噴射し、燃焼室内の気流の流れを利用して通常のガソリンエンジンでは考えられないほど、燃料の少ない状態での燃焼、すなわち希薄燃焼(リーンバーン)を実現するというものでした。
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しかし、希薄燃焼を実現できたのは、エンジンが低負荷時の極限られた状況においてのみであったため、計算上で得られたほどの燃費性能の向上を図ることができませんでした。それだけでなく、従来の三元触媒では希薄燃焼による排出ガスに含まれるNOxを還元することができず、結果としてNOx排出量は通常のエンジンよりも多くなってしまうばかりでなく、燃焼室内に大量のカーボンが発生してしまうなどの問題も抱えていたのです。そのため、ガソリンエンジンの燃費改善の切り札となるはずだった直噴技術は、日本ではいつの間にかフェードアウトしてゆきました。

ところが近年、ヨーロッパの自動車メーカーでは、再びこの直噴エンジンが脚光を集めています。早くからその開発に取り組んできたVW・アウディでは、2000年にルポに初めて搭載されたFSIエンジンと呼ばれるシリーズによって実用化、現在では4気筒から8気筒エンジンにまで導入されています。またアルファロメオでも伝統の直4ツインスパークエンジンに代わる新世代エンジンとして、JTSエンジン(従来のTSとは全く異なる意味で、JET THRUST STOICHOMETRICの略)を主力エンジンとして各モデルに採用しています。
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そしてメルセデスでも、日本には未だ導入されていませんが、本国ではユ06年にCLSに搭載された3.5リッターV6の直噴エンジン、350CGIによって、本格的にガソリン直噴エンジンへの取り組みを始めました。ユ07年からはEクラスにも導入されて、その流れはいよいよ本格化する気配を見せています。それに追従するようにBMWでも、直噴化への流れを見せています。まずターボと組み合わせることで、ハイパワーと低燃費を両立して大きな注目を集め、今後はNAの直6エンジンにも直噴を採用し(現状ではバルブトロニックとは併用されていません)、順次各エンジンへも取り入れてゆく予定です。

では、こうした欧州の直噴トレンドとは、一体従来の日本メーカーの取り組みとどこが異なるのでしょうか。次回はそのあたりをもう少し掘り下げてみたいと思います。
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2007年12月26日

アウディ新型A4は最もスポーティなサルーンとなるか? その2

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大柄なボディを手に入れたことで、実にスタイリッシュでスポーティなルックスに生まれ変わった新型A4、そのスポーツマインドは走行性能においてはどのように表現されているのでしょうか。

まず気になるのは、大柄になったことによる重量増です。A8やTTといったモデルではアルミパーツを多用することで、軽量性を追求してきたアウディですが、今回のA4でもボディ拡大による重量増は最低限に抑えてきました。その手法とは、高温整形による超高張力鋼板を各部に使用することで、従来の鋼板よりも薄い部材を使用するというものです。すなわち、鉄板の厚さを抑えることで軽量化を実現しながらも、高い剛性を両立したのです。また鋼板を溶接するためのスポット溶接の個所を減らす代わりに、レーザー溶接の施工距離を増やすことでも、重量軽減を図っています。
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これによって、ベースモデルのA4 1.8 TFSIで1410kgという車重に収めることに成功しました。これはライバルのメルセデスC200 Kompressor(5AT)の1490kgやBMW 320iセダン(5MT)の1430kgと比べても、軽量なだけでなく、現行A4の同じくFFモデルであるA4 2.0(搭載エンジンは異なりますが)の1470kgよりも大幅に軽量に仕上がっていることが分かります。

ワイドトレッド+ロングホイールベース化、全高を抑えたことによる重心高の低下、そして車重までも軽くしてきたのですから、これは走りには相当効いてくるはずです。加えて新型A4のメカニズム的なトピックスとして、ミッションケースに内蔵されたクラッチ(AT車ではトルクコンバーター)の位置を変更することで、フロントデフの位置を前進させ(縦置きエンジンベースのFFという厄介な構造のためちょっと分かりにくいですが……)、フロントアクスルの位置を154mm前方へ移動させた点も注目です。これは、エンジンの搭載位置をBMWのように極力エンジンルームの後方にマウントさせたのと同じ効果、すなわち前後重量配分の適正化とオーバーハング部の軽量化という点で大きな効果を発揮する設計です。
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つまり、今回のA4はスタイルの上でスポーツイメージをアピールするだけでなく、メカ的にも本気で運動性能の向上を目指して取り組んできたのです。最近のアウディのスポーツモデルの完成度を考えても、今回のA4は走りの面でも相当期待できそうです。これはBMWのお株を奪いかねない、といえなくもなさそうなだけに日本導入が本当に楽しみです。

ヨーロッパ向けの当初のラインナップとしては、ガソリンエンジンが1.8リッター直噴ターボの1.8TFSIと最新のA6に搭載される可変バルタイ機構採用の3.2リッターV6直噴の3.2FSIクワトロの2本立て。その他、ヨーロッパでは主力ともいえるディーゼルエンジンが3機種設定されます。日本に導入されるのは、まずこのガソリンエンジン車2機種でしょう。ただし、ミッションは今回もVW・AUDIお得意のツインクラッチシステムDSGはお預けです。コスト的な兼ね合いもあって、縦置きエンジン用はなかなか開発に踏み切れないのでしょうか。そこだけは残念なところです。
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2007年12月10日

アウディ新型A4は最もスポーティなサルーンとなるか? その1

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今春、メルセデスCクラスがフルモデルチェンジを行ったのに続いて、いよいよ同クラスのライバル、アウディA4もモデルチェンジを迎えました。これでドイツ高級車メーカー御三家のいわゆるDセグメント最新モデルが出揃ったというわけです。

A4となってから3代目の現行A4へのモデルチェンジは、A6などのフルモデルチェンジを機にアウディ車全体に採用されるようになった例のシングルフレームグリルを取り入れるためのマイナー変更的な内容にとどまったものでした。そのため、オールニューとなる今回の4代目では、開発陣もかなり気合が入っているはずです。その注目のポイントは、何といってもボディサイズでしょう。
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BMW3シリーズが先陣を切ってボディの拡大を図ったのに対し、メルセデスCクラスではサイズアップを最小限に収めてきたのは、以前にもご紹介したとおりです。ライバルの動向が分かれただけにアウディはいかに、と期待されましたが、その答えは何と3シリーズを上回るほどの大幅なサイズアップというものでした。

実はこの答えは、A4に先立って今年2月に発表されていたアウディの新型クーペにおいて、すでに明らかとなっていました。A5と名付けられたこの新しいクーペは、かのR8やRSシリーズ、TTに続く現在のアウディスポーツ路線を受けて投入された新たなモデルで、これこそがまさに新型A4のベースとされたのです。A5のボディサイズは、後にA4にも採用されることを見越した設計で、かなり大柄なボディが与えられていたのです。

この新開発シャシーに基づいた新型A4のボディサイズ(全長4703mm×全幅1826mm×全高1426mm)は、新型Cクラス(4585mm×1770mm×1445mm)はもちろん、現行3シリーズ(4525mm×1815mm×1425mm)よりも全長、全幅ともに上回る設定となりますが、全高は低めで3シリーズとほぼ同じ高さとなります。つまり高さは変わらず、長く幅広くなったのですから、全体としてみると平べったくなったわけです。このディメンションによって生み出されたのは、まさにA5を彷彿とさせるクーペのようなスタイリッシュで、スポーティなスタイリングです。
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こうして、エレガントさや上品さといった従来のブランドイメージを、明確にスポーツ方向へとシフトしてきたアウディの思想は、これまでコンサバ路線を貫いてきたセダンA4においてもデザインという非常に明快な形で表現されたわけです。そしてその方向性は、走行性能の面においても表現されているはずです。これまでのアウディは、クワトロ4WDシステムに代表されるように、常に安定感のある走りを第一としてきました。そのため、ドライビングプレジャーという点では、いまいち刺激に欠けたのも事実です。ですが、基本性能の高いそのシャシーを走りの方向に向ければ、メルセデスやBMWなどのFR車とはまた異なったスポーティさを表現することができるはずです。そうなれば、スポーツを売りにするBMW、安定感の高い走りが第一のメルセデスも、うかうかとしていられなくなるのではないでしょうか。

次回はこの新型A4のメカニズム的な特徴に迫ってみたいと思います。
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2007年10月24日

2007フランクフルトショー・レポート

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今回は、9月13日よりドイツで行われていたIAAフランクフルト・モーターショーにおけるダイムラー社の出展の概要についてご紹介します。フランクフルトといえば、ドイツのメーカーにとってはまさに日本メーカーにとっての東京モーターショーと同じく、最も力の入るモーターショーといえます。

そんなフランクフルトショーにおいて、メルセデスが今年最も力を入れてアピールしていたのが、環境性能です。動力性能や豪華さ、斬新な技術といった点はもちろんですが、今や世界中の自動車メーカーにとって、環境性能の向上は避けては通れない最大の課題となっています。以前にも取り上げましたように、欧州では燃焼効率に優れるディーゼルエンジンを核とした対策を、日本ではトヨタを中心に電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたハイブリッド技術を中心として、環境対策が進められてきました。そして今後考えられる最も高効率かつ現実的な技術といわれているのが、その両者を組み合わせたディーゼル+モーターのディーゼルハイブリッドです。メルセデスの今回のショーにおける目玉となったのが、まさにそのディーゼルハイブリッドでした。
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ディーゼルエンジンの分野では、独自のBLUETECテクノロジーによって欧州でもトップクラスの性能を実現しているメルセデスですが、電気モーターを使ったハイブリッドの分野では、先行するトヨタに大きく水を開けられていました。しかし近年、BMWなどとの協業によってハイブリッドの研究も促進し、その成果がようやく実ろうとしているようです。今回発表されたのはSクラスをベースとした『S300 BLUETEC HYBRID』で、4気筒ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせたパワーソースは224ps/560Nmという大排気量エンジン並みの動力性能を発揮しながらも、100kmを5.4リットルの軽油(日本的な表記では18.5km/リットル)で走行可能な燃費性能と極めて少ない二酸化炭素の排出量を両立しました。販売時期についての正式なアナウンスはまだありませんが、これが市販化されればまさにディーゼルをもハイブリッドをも上回る画期的なローエミッション車となることは間違いないでしょう。
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また、環境性能と快適性を両立した次世代のサルーンとして、コンセプトカー『F700』も発表されました。F700では新たに提唱された『DIESOTTO』コンセプトの元、直噴やターボ、点火制御といった技術を統合させることで、ガソリンエンジンながらもディーゼルエンジン並みの低エミッションと高出力の実現を目指したエンジンを搭載。またレーザーによって自車のタイヤ直前の路面状況を感知、それに対応して油圧制御によって最適なサスペンションセッティングを施すことで、『空飛ぶ絨毯』と呼べるほど快適な乗り心地を提供するという斬新なアクティブサスペンション『PRE-SCAN』コンセプトも発表されました。

そんなわけで、自動車の今後を占う意味ではとても意義のある出展となった今回のショーですが、一般的な見方としてはやや華やかさに欠けたともいえるかもしれません。そんな中、唯一ワールドプレミアとなった新型Cクラス・エステートが現実的な線では最も注目のモデルといえるかもしれません。その詳細については、また次回詳しく取り上げたいと思います。
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2007年09月27日

新型スマートにもBRABUSモデル追加

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以前このコーナーでも紹介した新型スマートですが、まだ日本へは正式に導入されていないにも関わらず、本国では早くもそのスポーツバージョンたるスマートBRABUSが発表されました。

初代スマートにも設定されたスマートBRABUSは、スマートをベースにメルセデスのチューナーとしてもお馴染のBRABUSが内外装およびエンジンなどにファインチューンを施すことで、スポーティに仕上げたモデルです。初代スマートではフォーツーのクーペ、カブリオレのほか、ロードスターやロードスタークーペにもこのBRABUS仕様が設定されました。新型スマートには今のところフォーツーのクーペとカブリオレしかラインナップがありませんが(新型にロードスターが設定されることはないと思います)、そのいずれにもBRABUS仕様が設定されます。
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新型のスマートBRABUSには、標準モデルとさらにスポーティな装備を施したエクスクルーシブが設定されます。標準モデルの仕様としては、外観ではBRABUSのモノブロック6ホイール(フロント16、リア17インチ)とワイドリアフェンダーを装着、また専用のセンター出しマフラーとそれに合わせたリアバンパーが組み合わせられます。内装でもステンレス製ペダルやパドルシフト付きのレザーステアリングなどを装備することで、スポーティ感を演出します。

エクスクルーシブでは、さらにプロジェクタータイプのヘッドライトや専用デザインのフロントバンパー、サイドステップ、リアバンパーなどが追加されるとともに、レザーシートが奢られるなど、より高級感を高めた仕様となっています。
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エンジンの仕様は共通で、1リッターターボエンジンをベースにファインチューンを施すことで、98ps/5500rpmと140Nm/3500rpmのパワー・トルクを発揮。数字だけ見れば全く驚くほどではありませんが、780kgのボディを加速させるには十分すぎるほどのパワーと言えるのではないでしょうか。またターボ車としては驚異的な100kmあたり5.2リッター(日本流にいうと19.2km/L)という燃費を実現している点も注目です。

ところで、このスマート事業というのはメルセデスの中では全く採算の取れない赤字部門となっており、存続も危ぶまれていただけに、実はフルモデルチェンジが行われたこと自体がとても驚きでした。北米への進出も果たし、新たな展開を見せ始めてるとはいえ、慈善事業ともいえるようなこのマイクロカーをダイムラー社が作り続けているということは、環境問題への取り組みという面からもとても評価できることだと思います。そんな中で登場したこのスマートBRABUSというクルマは、環境への高い適応性を持ちながらも遊び心を忘れない実にスマートらしいクルマと言えるのではないでしょうか。
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2007年09月13日

新型NEWミニに待望のワゴンボディ登場

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往年のミニでは、絶大な人気を誇ったワゴンボディが、新型となったNEWミニにもようやく追加されます。いわゆる旧ミニでは、販売ブランドによってカントリーマン、トラベラー、エステートとそれぞれ名称が異なったワゴンボディですが、NEWミニでは『MINI CLUBMAN』と名付けられ、今秋から欧州を皮切りに販売をスタートします。

クラブマンのボディは、通常のハッチバックモデルに比べて全長で260mm延長され、Bピラーから後は全く新しくデザインし直されたものです。特にボディ右側には、『クラブドア』と呼ばれる観音開きタイプの小さなリアドアが追加され、後席の乗降性は大きく改善されました。その後席についても、全長のストレッチに伴って約80mmもレッグルームが広がったことから、ハッチバックモデルの2+2的な仕様から、しっかりと大人2人が乗れるスペースを確保しました。
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観音開きドアという手法は、最近ではマツダのRX-8でも採用されているものだけに、特別斬新というわけではありませんが、デザイン性と機能性をうまく両立した設計として歓迎できるものではないでしょうか。このクラブドアのドアノブはボディ外板にはなく、フロントドアを開けた後にのみ開閉が可能なのもRX-8と同じです。ただイギリス仕様でも、右側にクラブドアが設置されているようなので、日本に導入されるときにはしっかりと左側に移植されるのか? という点は気になるところです。

またラゲッジスペースも大きく拡大され、通常時で260リッター、リアシートを倒すことで930リッターの容量を確保しました。とはいっても、トヨタ・ヴィッツでさえ274リッターのトランク容量を持っていることを考えると、その辺は相変わらずデザイン重視な設計のようですが、ハッチバックに比べれば十分に使える荷室になったはずです(ハッチバックではそれぞれ160/680リッター)。

まぁ、そうした細かいハナシは抜きにして、やはりこのクルマの最大の魅力はそのデザインでしょう。260mmも全長が延びた割には、それほど間延びした印象も与えず、リアゲートまわりのトリム処理には旧ミニのワゴンボディのデザインモチーフをうまく取り込むことで、チャーミングなNEWミニにまた新たな魅力を追加しました。一連のリバイバルものとしては最大のヒットを飛ばしたミニの最後の隠し玉ともいえるクラブマンは、新型になってちょっと勢いが落ちたNEWミニの新たな起爆剤となることは間違いありません。

イタリアではFIATチンクチェントの新型が発表されるなど、まだまだ続きそうなリバイバルブームですが、メルセデスでもいよいよあのガルウィングの名車を復活させる、というような噂も聞かれるだけに、この分野もなかなか目が離せない状況が続きそうですね。

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2007年08月20日

ベンツ SLRマクラーレンにロードスターが登場

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自動車の世界の天上界の究極モデルに、さらにゴージャスなオープンタイプのロードスターがラインナップされる……。そんな何とも夢のようだが現実の話が、今回紹介する「メルセデス・ベンツSLRマクラーレン・ロードスター」だ。

20世紀末あたりからポツポツとその火種が現れ始め、21世紀に入るやついに本格化した超ド級スーパースポーツの頂上対決に、メルセデスが満を持して送り込んだのが、SLRマクラーレンだ。エンツォ・フェラーリ、ポルシェ・カレラGT、ランボルギーニ・ムルシェラゴ、ブガッティ・ベイロンといったライバルたちと向こうを張るべく、メルセデスが白羽の矢を立てたのが、F1でもタッグを組むレーシングコンストラクターのマクラーレンだ。マクラーレンの手によるSLRのボディは、F1のモノコックをはじめ、あのマクラーレンF1-GTRでも生かされたカーボンコンポジットによるフレームワークをさらに発展させたものだ。オープンボディのロードスターでは、Aピラーにスチール鋼板を追加するなどのさらなる剛性アップが図られ、クーペと同等のねじれ剛性を確保しているという。
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AMG製のスーパーチャージャー付き5.5リッターV8エンジンやセラミック素材を使ったブレーキディスクを採用するCブレーキ、緊急制動時にアクティブリアウィングが立ち上がってリアタイヤのダウンフォースを高めるエアブレーキ機能など、その基本スペックはクーペと変わらないが、何とソフトトップのオープンボディにも関わらず、332km/hという最高速が実現可能というのだから、もはや何も言うことはあるまい。セミ・オートマチックの電動ルーフは、ロックの解除のみが手動で、開閉操作に掛る時間は10秒以内で、デイリーユースと究極のスポーツ性の融合を図ったとか……。
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そんな夢のスーパースポーツの生産が開始されるのは9月からの予定で、イギリスにあるマクラーレンの工場でその生産は行われる。気になる国内でのお値段はクーペモデルの1015万円アップとなる7000万円となる。一方、昨年限定モデル「722 Edition」も発表されたクーペモデルは一時その生産は停止し、しばらくはロードスターのみの設定となるようだ。

ところでこのSLRの日本国内での販売は、通常のモデルのようにメルセデス・ディーラーで取り扱われるのではなく、DC日本が直接販売を担当するというもの。パーソナル・リエゾン・マネージャーと呼ばれる専属のスタッフが付き、一台づつその受注から納車後のサービスまでを専任で行うという異例の待遇だ。そんなあたりもまた、このクルマのスペシャルな部分といえるのかもしれない。
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2007年07月23日

ベンツ C63 AMGは21世紀の500Eとなるか?

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日本では6月にようやく新型Cクラスが発売になったばかりですが、本国では早くもその究極バージョン『C63 AMG』が発表されました。その車名が表すとおり、大方の予想に違わずあのAMG製6.2リッターV8エンジンが搭載されてきたというわけです。

このエンジンに関しては以前にもご紹介しましたのでここでは詳細を省きますが、C63にはややデチューンされた457ps/6800rpm、600Nm/5000rpm仕様が搭載されるようです(標準仕様は514ps/630Nm)。まぁ、デチューンとは言ってもこの数字ですから、コンパクトなCクラスに搭載されることを考えれば、全く控え目とは言えないパワーです。実際、そのパワーウェイトレシオは3.6kg/ps、0-100km/hを4.5秒で駆け抜けるというデータが公表されていますので、パワー不足を心配する必要は全く無用です。
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C63のメカニズム的な特徴としましては、フロントサスペンションのロアアームを延長してトレッドを広げた点と電子制御スタビリティコントロールシステム、ESPにモード切り替え機能を加えたESPOを採用したことが挙げられます。まずフロントサスペンションに関しては、独自に設計されたロアアームを採用することでトレッドを35mm拡大しています。235サイズのワイドタイヤや専用チューンのサスペンションと組み合わせることで、より安定感の高い走りとシャープなハンドリングが両立されています。同じ3リンク式サスペンションを採用する先代AMGモデルでもここまでの大掛かりなモディファイは行っていませんでしたが、わざわざロアアームを作り直してまでトレッドを延長しなければならなかった理由があるのか、ちょっと勘ぐってしまいます。
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またESPには、ESP ON/ESP SPORT/ESP OFFという3つのモードが用意され、手動で切り換えることが可能です。ESP ONは通常走行用のモードで、これをSPORTに切り替えるとよりダイナミックな走りも許容してくれるようになり、カウンターステアが当たるような走りも可能になりますが、それも度が過ぎるとエンジンパワーを絞ったり、ブレーキ制御の介入が入り、本当に危険な状況には陥らないよう制御してくれるというものです。そしてもうひとつのOFFモードでは、そうした制御は一切介入せず、ドライバーはエンジン性能を思いのままに引き出すことができるようになります。その分、ドライバーを選ぶことにはなりますが……。ただ、いずれのモードにおいても、ブレーキ操作時にはABSは作動しますので、そうした意味では安全にハイパワーを楽しめるシステムと言えます。

実はこうしたトラクションコントロールの考え方の違いが、同じハイパワーFRを扱うBMWとメルセデスの最大の相違点なのです。BMWでももちろん、ESPによってエンジン出力の制御を行いますが、ハイパワーモデルでは基本的にはLSDの作用によってエンジンパワーを積極的に活用して挙動を安定させるという考え方がそのベースにあります。逆にメルセデスの場合は、空転したタイヤにブレーキを掛けることでスリップを止め、擬似的にLSD効果を発揮させることで、クルマが安定するようコントロールしているのです。
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メルセデスでもひと昔前まではやはりLSDを使ってトラクションを確保していたのですが、ブレーキによって制御する方向に変わってきたのが、500Eに採用されたASRを使い始めるようになってからのことです。それはともかく、トラクションが掛かりにくいハイパワーFR車の駆動力制御に対するアプローチの違いこそが、まさにメルセデスとBMWの『スポーツ』に対する考え方の違いを如実に表したものだと言えるのではないでしょうか。

さて、そのほかにもC63にはフロント6ポッド、リア4ポッドの大径ブレーキシステムやAMG独自の車速感応型パワステ、ブリッピング機能を持たせた7G-TRONICミッションなど、見どころが満載なのですが、分かりやすいところではとても派手なエクステリアが与えられた点にも注目です。拡大されたトレッドを収めるため、フロントフェンダーアーチはあの500Eを彷彿とさせるオーバーフェンダー状にボリュームアップされ、ボンネットにもそこに収まるV8エンジンを想起させる2本のパワードームが設けられるなど、AMGのレギュラーモデルとしてはかなり気合の入ったルックスが与えられました。これまでのAMGモデルも(C36以降)、エアロパーツやホイールなどで差別化は図っていたものの、ここまで激しいコスメチューンは行っていませんでした。そのため、顧客からはライバルに比べてちょっと物足りないという意見もあったのかもしれません。レギュラーモデルも含めて、この分かりやすさこそ、この新型Cクラスのテーマなのかも知れませんね。
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